Premier League Section W Proceedings — Decision(2026年9月29日公表)
プレミアリーグ対マンチェスター・シティ
独立懲戒委員会決定書(本文)日本語訳
点線の語は、PCではマウスを乗せると、スマートフォンではタップすると説明が出ます。
凡例
本書は、プレミアリーグ独立懲戒委員会の決定書(Premier League Section W Proceedings — Decision、2026年9月29日公表、PDF 40ページ)のうち、本文(Core Decision)の日本語訳である。付属書は原文PDFに含まれないため訳出対象外とした。
- 黒塗り:原文の黒塗り箇所は「黒塗り」と表示した。文脈から対象の種類(人物、会社、取決め、年度など)が推察できる場合は、〈人物〉のように〈 〉で補足した。〈 〉内は訳者の推察であり、原文の記載ではない。黒塗りの内容自体の推測・補完はしていない。
- 用語:わかりにくい語は平易な語に置き換え、原語と説明は点線の下線を引いた語の補足(PCはマウスオーバー、スマートフォンはタップ)に収めた。補足は各節の初出にのみ付けている。PL=プレミアリーグ、クラブ=Manchester City Football Club Limited、AD=アブダビ。
- 訳注:「訳注」と記したボックスと補足は訳者によるもので、原文にはない。本文外の事実を補った箇所には出典を付した。
- 段落番号:原文の通し番号(第1〜159段落)を付した。
訳注付属書(全37)は公開されていません
本文は「付属書15」「付属書24」のように付属書を何度も参照しますが、2026年9月29日に公表されたのは本文(Core Decision)だけです。詳しい事実認定・理由・人物の特定は付属書に書かれているため、本文だけでは分からない点が残ります。
表紙
プレミアリーグ規則セクションW(懲戒手続)に基づく手続に関する件
懲戒委員会としての審理
当事者:ザ・フットボール・アソシエーション・プレミアリーグ・リミテッド 対 マンチェスター・シティ・フットボール・クラブ・リミテッド
決定書
- 黒塗り人物(代理人):ザ・フットボール・アソシエーション・プレミアリーグ・リミテッド代理人(Bird & Bird LLP の依頼による)
- 黒塗り人物(代理人):マンチェスター・シティ・フットボール・クラブ・リミテッド代理人(Clifford Chance LLP の依頼による)
審問日
- 2024年9月:16〜19日、23〜26日、30日
- 2024年10月:1〜2日、4日、7〜10日、14〜17日、21〜24日、28〜31日
- 2024年11月:1日、4〜5日、11〜14日、18〜20日
- 2024年12月:3〜6日
(A) 序論
i) 前文
2023年2月、PLはクラブに対して本件手続を開始した。クラブは、多数のシーズンにわたり、PL規則について100件を大幅に超える個別の違反を犯したとして告発された。PLが主張する違反は大きく4つの区分(告発1、2、3、4)に分けられた。告発1はさらに4つの下位区分(1(A)、1(B)、1(C)、1(D))に、告発4も同様に4つの下位区分(4(A)、4(B)、4(C)、4(D))に分けられた。これらを総称して「各告発」と呼ぶ。
クラブは各告発のいずれも否認した。
手続開始後、当委員会はPL規則セクションWに基づき懲戒委員会として任命され、各告発を審理・判断した。
本書と、本書に添付・引用される付属書は、各告発に関する当委員会の判断を示すものである。本書には、付属書で詳しく扱った事項と、個別付属書での判断の概要も含まれる。これは各付属書への道案内とすることを目的とする。本書と付属書は全体として読まれるべきであり、両者が合わさって委員会の決定と理由、すなわち「本決定」を構成する。
付属書36は本決定で用いた用語集・略語一覧である。付属書37は、本決定に登場する主要な個人・団体を特定し、その経歴を簡潔に記した主要登場人物一覧である。本決定では、そうした個人・団体を略語や略称で表記した。その理由は付属書6に記載している。この方法により、個人・団体に対するいかなる軽視も意図するものではない。
PLが各告発で主張した重大な不正行為を立証するには、個々の告発を証明する、強力で説得力のある証拠が必要であった。以下および付属書に記載するとおり、告発4(B)を除き、当委員会は証拠がその基準を満たすと確信した。
その結果、本決定に詳述するとおり、告発4(B)を除く各告発がクラブに対して立証されたと判断した。
訳注この決定の要点
- 2023年2月、PLはマンチェスター・シティを多数のPL規則違反で告発した(報道では115件)。
- 当委員会は、告発4(B)を除くすべてが立証されたと判断した(報道では115件中114件)。
- 核心は、2009/10〜2017/18の9シーズンにアブダビ系スポンサーからの収入として計上された9億4,994万ポンドのうち、8億3,069万ポンドが実はオーナー(ADUG)の資金だったという認定(第72段落)。
- クラブ側の重要な証人の一部が虚偽の証言をし、その一部は不誠実だったとも認定された(第29段落)。
- この本文には制裁(処分)の内容は書かれていない。報道によれば、クラブは上訴する意向を示している。
出典:Premier League Statement: Manchester City FC / NBC News: Man City guilty of almost all the 115 financial charges
ii) 手続の経過に関する所見
各告発の実体審理のための審問(以下「審問」)は2024年9月に始まり、2024年12月に終了した。2023年2月の手続開始から審問終了までの手続年表は付属書35にある。
手続は終始、双方によって非常に激しく争われた。これは両当事者への批判では全くなく、単なる事実である。あらゆる点が徹底的に争われた。中間手続段階でも審問でも、争点は当事者間で激しく争われた。
PLは、告発状(後に修正)と事実陳述書で主張を提示した。これらの文書(合計約500ページ)は次の事項を示した。
- a) PLがクラブによるものと主張する100件超のPL規則違反
- b) PLが各告発を裏付けるために依拠した事実・事項
告発状のセクションEには、PLはクラブの行為を「PLのリーグ競技の適正かつ公正な運営にとって重要な規則の、極めて重大で、有意で、持続的かつ意図的または無謀な違反を含むもの」とみなしている、と記載されていた。
PLの告発状と事実陳述書には、後に追加情報としてさらに50ページが補足された。
クラブの答弁書(後に修正)は、告発状と事実陳述書の双方に応答した。クラブは各告発を全面的に否認した。答弁書は200ページ超にわたり、各否認の根拠となる多数の個別の理由を述べた。答弁書にも追加情報が補足された。
書面手続は次により完了した。
- a) クラブの答弁書に対してPLが提出した長大な再答弁書
- b) スイス法の特定事項に関する、クラブの短い再々答弁書
これらの書面は、各告発について当事者間に存在した(非常に多数の)事実上・法律上の争点の範囲を有益に画定した。争点は次によってさらに明確化された。
- a) 当事者が作成した争点一覧
- b) 審問に向けた双方の書面による冒頭陳述と最終陳述
- c) 審問の最後に当委員会の要請で当事者が作成した、有益な「ロードマップ」文書
手続では膨大な量の文書その他の証拠が生じた。例として次のとおり。
- a) 証拠開示の過程で数百万件の文書が精査されたと当委員会は告げられた。その作業により膨大な数の文書が開示された。精査と作業の負担の大部分はクラブが負った。
- b) PLは、審問で証言した6名の証人陳述書を提出した。クラブは24名の証人陳述書または文書証拠を提出し、その多くが審問で証言した。当事者が依拠した証人陳述書は合計700ページをはるかに超えた。
- c) 両当事者は次の分野の専門家証拠を提出し、依拠した。
- i) アブダビの政治と統治
- ii) 会計基準
- iii) 財務情報の分析
- iv) 公正市場価値(FMV)の評価
- v) サッカーのスポンサーシップ(脚注1)
- vi) スイス法各専門家は書面報告を作成し、複数回に及ぶことも多かった。同じ分野の専門家同士は協議し、合意点と争点を示す共同声明を作成した。これらの報告と共同声明は、裏付け文書を含めて数千ページに及んだ。
- d) 当事者は、審問で当委員会を紙の海に溺れさせないよう大いに努力した。これには深く感謝している。それでも、審問で使った審問資料集の文書量は依然として非常に膨大であった。例えば次のとおり。
- i) 審問終了時点で、審問資料集の目録は750ページを超えていた。
- ii) 主要文書を収めたコア資料集は数万ページに及んだ。
実体審問は2024年第4四半期に42日間行われた。事実証人と専門家証人の口頭証言は34日間に及んだ。当事者は審問の冒頭に4日、最後に4日を口頭弁論に充て、書面陳述(各当事者それぞれ数百ページ)を補った。判例・法資料の資料集には300件超の出典が含まれていた。そこにはPL規則の多数の版、UEFAの規約・規則、英国・アブダビ・海外の立法、英国・外国・スポーツ仲裁裁判所(CAS)の判例、会計規則・ガイダンス、学術的論評が含まれていた。
手続の規模と激しさにもかかわらず、手続は当事者の代理人によって効率的かつ効果的に運営された。当委員会は当事者とその代理人を称賛する。審問自体の進め方についても同様である。手続の範囲は広大なままであったが、彼らの努力によって管理可能なものとなった。
本決定の作成に、当委員会が望み、また審問終了時に予想していたよりもはるかに長い時間を要したことは遺憾である。ただし当委員会は、決定作成期間を通じて、審問で使われた全文書に加えて次のものを利用できたことを幸運に思う。
- a) 各証人・各専門家の審問での証言の逐語記録(約7,000ページ)
- b) 証拠と、本手続で判断すべき多数の争点それぞれについての、当事者の極めて詳細な書面陳述(審問の最後に4日間の口頭弁論で補充されたもの)
(B) いくつかの包括的事項
i) 証明責任と証明基準
付属書7には次の事項を示した。
- a) 本手続で証明責任がどちらにあると当委員会が判断したか
- b) 各告発に適用されると当委員会が考えた証明基準
ii) 状況証拠と推認による立証
以下および事実証拠を検討し事実認定を記した付属書から明らかなとおり、PLの主張は部分的に次の点に依存していた。
- a) 当委員会が状況証拠からどのような判断をしたか
- b) 主要な証拠源から、当委員会がどのような推認を行う用意があったか
これらを検討する際に当委員会が適用した原則は付属書7に記載している。
iii) 事実証拠の二つの主要な源泉
審問で当委員会が利用できた事実証拠の主要な源泉は次のとおりである。
- a) 当時またはそれに近い時期に作成された文書(当時の文書)
- b) 個々の証人による書面・口頭の証言
これらの証拠源を検討する際の留意点、適用した原則、採った取扱いは付属書7に記載している。
iv) 「出頭しなかった証人」と「提出されなかった文書」
双方の当事者は、次の事実から推認を行うよう当委員会に求めた。
- a) 関連する証拠を提供し得た(と主張される)特定の個人が、実際には審問に出頭して証言しなかったこと
- b) 一方または他方の当事者から提出され得た(と主張される)特定の関連文書が、実際には審問用に提出されなかったこと
したがって、利用可能な文書が膨大で、出頭した証人が広範な事実証拠を提供したにもかかわらず、当委員会が利用できた証拠の全体像は、本来あり得たほど完全ではなかった。
次の事項について当委員会が採った取扱いは付属書7に記載している。
- a) どのような推認が正当に導かれるか(導かれるとすれば何か)の評価と、当委員会が導くことが適切と考えた推認
- b) 証拠の全体像が不完全であるという事実を踏まえた対応
同様に、第三者が提供した文書を、次の場合にどの程度重視すべきか(そもそも重視すべきか否かを含む)も検討する必要があった。
- a) その文書が関連事項の不完全な記録にすぎないと見える場合
- b) その文書の情報について、審問でどの証人も言及する用意や能力がなかった場合
こうした文書の取扱いと、それに関する結論も付属書7に記載している。
v) 当委員会の前で証言した事実証人
当委員会は27名の証人から事実証拠を聴取した。全員が、程度の差はあるが反対尋問を受けた。
付属書6には次の事項を記載している。
- a) 各証人が証言した主な事項
- b) 次の点についての当委員会の結論
- i) 各証人の証言の信頼性
- ii) 証言の実質的内容
当委員会の前で証言した事実証人の大多数は、各告発の判断にあたり誠実に証言し、当委員会を助けようと最善を尽くしたと結論した。ただし、主に付属書6に記載するとおり、次のようにも結論した。
- a) クラブ側で証言した多数の重要な事実証人が、いくつかの重要な点で虚偽の証言をした。
- b) そのうち特定の者は、真実でないと知りながら審問で証言しており、したがって不誠実であった。
それらの結論が各告発に関する事実認定にどう影響したかは、当該事実認定を記した付属書に示されている。すなわち次のとおり。
- a) 付属書15:告発1(A)に関して証言した事実証人の証言を採用しなかった箇所
- b) 付属書16、17、18:告発1(B)に関して証言した事実証人の証言を採用しなかった箇所
- c) 付属書19:告発1(C)に関して証言した事実証人の証言を採用しなかった箇所
vi) 書面で証拠を提出したが審問に出頭しなかった証人
クラブは、手紙その他の文書で証拠を提出したが(様々な理由により)口頭証言のために出頭しなかった多数の個人について、その証拠を考慮し重視するよう当委員会に求めた。
こうした証拠の取扱いは付属書7に記載している。同じ付属書7に、その証拠を踏まえた結論と、その書面証拠をどの程度重視したか(重視した場合)も示している。適切な場合には、他の付属書でもその書面証拠に言及している。
vii) 当委員会の前で証言した専門家
専門家証人の証拠についての当委員会の見解は、その証拠が関係する争点を検討した付属書に記載している。同じ分野のある専門家の証言を他の専門家より優先した場合や、専門家の意見を採用しないと結論した場合は、その旨と理由を示した。
(C) 前提となる重要な論点:PLと告発の進め方に対するクラブの批判
クラブは次の点を強く批判した。
- a) PLによるクラブの調査
- b) 各告発を行うというPLの決定
- c) PLによる告発の進め方のいくつかの側面
それらの批判、クラブがそれを正当とした根拠、クラブがそこから生じると主張した帰結は、主に付属書3に記載している。付属書3には、これらの批判に対するPLの応答も示している。
付属書3に記載した理由により、当委員会はクラブのPLに対する批判を退けた。当委員会の見解では、それらは正当ではなく、クラブが当委員会に求めた帰結をもたらすものでもなかった。
訳注なぜ「オーナーのお金」を「スポンサー料」に見せかける必要があったのか
FFP(UEFAのCLFFPRs、PLのPSR)では、クラブの赤字に上限があります。その計算では、スポンサー料は「収入」に数えられますが、オーナーからの出資は数えられません(脚注5・6)。オーナーがいくらお金を出しても、帳簿上の赤字は減らないのです。
そこでクラブは、オーナー(ADUG)のお金を、アブダビ系スポンサーが払ったスポンサー料のように見せかけました。当委員会はこれを「偽装出資スキーム」と呼んでいます(第67段落)。
ADUG補填分 8億3,069万ポンド(87%)=本来は「出資」として扱うべきお金
同じ発想で、費用の側でも、クラブが払うべき報酬や肖像権料をADUGに肩代わりさせ、帳簿から消していました(第91〜99段落、フォードハム取決め)。収入を多く、費用を少なく見せることで、FFPやPSRを守っているように装ったというのが当委員会の認定です。
(D) 各告発に関係する主要な規制上の義務
本手続の核心には、PL加盟クラブが遵守すべき複数の規制上の義務がある。各告発の基礎となる事実に入る前に、主要な義務を簡潔にまとめておく。
i) 告発1
本手続の対象期間を通じて、すべてのPL加盟クラブは、PL規則に基づき、適用される法令・規制上の要件に従って作成・監査された年次財務諸表をPLに提出する義務を負っていた(年次決算書提出要件:付属書8)。
この義務が実務上何を求めるかは当事者間の争点であり、当委員会は専門家証言を聴取した。この点に関する判断は付属書8に記載している。当委員会の見解では、この義務は、PL加盟クラブがPLに提出する年次財務諸表について次のことを求める。
- a) 基準日時点のクラブの財政状態を、真実かつ公正に表示すること
- b) 「関連当事者」との取引(関連当事者取引)について、その関係が財務諸表に与える影響を利用者が理解できるだけの情報を開示すること
ii) 告発2
UEFAクラブライセンス・財務フェアプレー規則(CLFFPRs)は、2013/14シーズン以降の財務フェアプレー(FFP)を規律するために導入されたUEFAの規則である。その発展と、本手続に関係する時点での規定は付属書9に記載している。
収支均衡要件はCLFFPRsの中核規定である。要約すると、CLFFPRs導入以降、UEFAのクラブ大会への出場を望むPL加盟クラブは、次のことを求められる。
- a) そのためのライセンスを取得すること
- b) CLFFPRsを遵守すること。ここでいう「遵守」とは次を意味する。
- i) CLFFPRsが定める詳細な基準に従って計算した一定期間(審査対象期間)の「収支均衡結果」を提出すること。簡単にいえば、収支均衡結果とは審査対象期間におけるクラブの収入と支出の差を示す財務計算である。
- ii) その収支均衡結果が、閾値となる財務上の「収支均衡要件」を満たすか上回ること
告発に関係するすべての時点において、PL規則B.14.6は、PL加盟クラブに対し、UEFAの規約・規則(加盟クラブが従う義務を負う範囲でCLFFPRsを含む)を遵守することを義務づけていた(付属書27参照)。
iii) 告発3
収益・持続可能性規則(PSR)は、2015/16シーズン以降、PL加盟クラブ間のFFPを規律してきたPL規則である。告発3に関係する規定は付属書8に記載している。要約すると、PSRを遵守するには、連続する3年間の調整後税引前損益(AEBT)の合計が一定の財務閾値(損失の上限1億500万ポンド)を満たさなければならない。この合計が閾値を超える損失を示した場合、そのクラブはPL規則違反とみなされる。
iv) 告発4
PL規則には、調査の過程でPLが行う特定の要求にPL加盟クラブが従うことを求める規定がある。これらの義務の性質と範囲は付属書32で検討している。
v) 最大限の誠実義務
PL規則は、PL加盟クラブに対し、常に次の相手に対する最大限の誠実義務を課してきた。
- a) PL
- b) 他のPL加盟クラブ
この義務の範囲と性質は付属書32で検討している。
(E) 告発1、2、3に関係する事実的背景
各告発に関する当委員会の事実認定は、関係する各付属書に詳しく記載している(脚注2)。以下はそれらの詳細な認定を損なうものではなく、各告発の結論に関して後述する点の背景として、事実認定を大まかに概観するものである。
i) ADUGによるクラブの買収
クラブは1960年代から1970年代にかけて大きな成功を収めた。その後はやや低迷した。1980年代は旧フットボールリーグの1部と2部で過ごした。1992/93シーズンのPL創設メンバーであったが、1997/98シーズン終了時には2部(ディビジョン2)に降格していた。100年以上の歴史で初めて、イングランドサッカーの3部相当に落ちたのである。2001/02シーズン終了時にPLに復帰したが、その後数年はPLで8位から15位の間で終わるシーズンが続いた。
訳注イングランドのリーグ階層(当時)
| 階層 | 1992年より前 | 1992年以降 |
|---|---|---|
| 1部 | フットボールリーグ ディビジョン1 | プレミアリーグ(PL) |
| 2部 | ディビジョン2 | フットボールリーグ ディビジョン1 |
| 3部 | ディビジョン3 | ディビジョン2 |
PLが創設されたため、名前の上では「2部(ディビジョン2)」でも、実際は3部にあたります。シティは1998年にこの実質3部に降格しました。
2008年までにクラブは赤字を出しており、長年の投資不足の後で、繁栄しているとはいえなかった。しかし、クラブの黒塗りは、クラブを、重大な潜在力を持つ黒塗りと見なしていた。すなわち黒塗り、適切な投資・計画と、競技面・非競技面の人材があれば、クラブはピッチの内外で再び大きな成功を収め得る、というものであった。
2008年9月、ADUGがクラブ株式の90%を取得した。ADUGは翌年、残る10%も取得した。取得の過程で、HHSMは「マンチェスター・シティの同胞ファン諸君」宛ての公開書簡を書いた。その書簡で、HHSMは次のことを述べた。
- a) 私人としてクラブを買収していることを確認した。これは、クラブを買収したのは彼ではなくアブダビ首長国そのものではないか、という報道上の憶測に応えたものと見受けられる。
- b) クラブに対する野心的な計画と抱負を述べた。
黒塗り
- a) 黒塗り
- b) 黒塗り
- c) 黒塗り
- i) 黒塗り
- ii) 黒塗り
- d) 黒塗り
- e) 黒塗り
- f) 黒塗り
- g) 黒塗り
ADUGによる取得後、クラブは、認識された潜在力を実現するための計画づくりに多大な時間と労力を費やした。重厚な取締役会を置くほか、ピッチ上の成績向上のため有能な競技面の人材を採用した。スタジアムとその周辺・関連施設を含むインフラ改善の野心的な計画を立てた。多くの分野で質の高い非競技面の人材も採用した。本手続にとって最も関係が深いのは、クラブの商業チームである。
当時の文書が示し、また当委員会が証拠として聴取したとおり、クラブはADUG所有の初期段階から、黒塗りの抱負を実現するには非常に多額の資金が必要になると理解していた。短期的には、その資金はクラブの所有者であるADUGからの多額の出資、事実上黒塗りからの出資で賄う必要があると認識されていた。
実際そのとおりになった。所有初年度のシーズンに、ADUGはクラブに1億9,000万ポンド超の出資を行った。2009/10シーズン中には、さらに2億9,500万ポンドを出資した。黒塗り付属書15に記載するとおり、その後も長年にわたり、クラブはADUGに多額の資金を繰り返し要請し、ADUGは非常に多額の資金を払い込み続けた。
ii) 商業収入を増やす必要性についてのクラブの認識:黒塗り
クラブは、黒塗りの抱負を黒塗りの提供のみによって賄うのは、持続可能なモデルではないと認識していた。商業事業を成長させ、商業収入を大幅に増やす必要があった。ADUGによる取得時点で、クラブの商業収入は、PLのトップクラブやより広い範囲のクラブが得ていた収入のごく一部にすぎなかった。
商業収入を増やすためにクラブが計画した方法の一つ(唯一ではない)は、UAE全般、特にアブダビで高額のスポンサー契約を求めることであった。黒塗りクラブは、段階的(ピラミッド型)のスポンサー構造の導入を検討することにした。すなわち次のとおり。
- a) 黒塗り
- b) クラブは、異なる(より小さい)権利・特典のパッケージを、異なる金額水準で提供できる他のスポンサーと提携する。
クラブの当時の文書には、ADスポンサーと非ADスポンサーの双方との契約から、短期・長期でどの程度の収入を見込んでいたかを示す数値があった。
黒塗り
- a) 黒塗り
- b) 黒塗り
黒塗りスポンサー契約について、PLからは何の異議も申し立てられなかった。PLは次のことを認めた。
- a) 黒塗りスポンサー契約の取引条件は、クラブの上級幹部・商業チームのメンバーと黒塗りスポンサー企業側との間で行われた、独立当事者間の商業交渉の結果であったこと
- b) 黒塗りスポンサー契約はFMVであったこと(付属書25参照)
黒塗り時期、クラブは、スポンサー契約黒塗り契約の相手方・内容を締結することでも合意に達したと発表した。
黒塗りスポンサー契約について、PLは何の異議も申し立てなかった。PLは次のことを認めた。
- a) 黒塗りスポンサー契約の取引条件は、クラブと黒塗りスポンサー企業との間で行われた、独立当事者間の商業交渉の結果であったこと
- b) 黒塗りスポンサー契約はFMVであったこと
その後の数か月から数年の間に、クラブは次の契約を締結した。
- a) 黒塗りスポンサー企業との、一連の追加のADスポンサー契約
- b) 黒塗りスポンサー企業との、追加のADスポンサー契約
クラブが締結した各ADスポンサー契約の詳細と主要条件は付属書4に記載している。
PLの主張は次のとおりであった。
- a) 黒塗りスポンサー契約を除き、その他のADスポンサー契約はいずれも、
- i) クラブと当該ADスポンサーとの間の独立当事者間の商業交渉の結果ではなかった。または
- ii) FMVではなかった。
- b) それら他のADスポンサー契約に記載されたスポンサー料(以下「表向きのスポンサー料」)は、当該ADスポンサーが全額を支払う義務を負うものでもなく、実際に全額が支払われてもいなかった。各事案でクラブとADスポンサーが合意した真の内容は次のとおりであった。
- i) ADスポンサーは、表向きのスポンサー料の一部(以下「スポンサー実負担分」)のみを支払う義務を負い、実際にそれを支払った。
- ii) 表向きのスポンサー料とスポンサー実負担分との差額(以下「ADUG補填分」)は、ADUGが支払う義務を負い、実際に支払った。この合意は、本決定で「偽装出資スキーム」(後述)と定義したものに基づいて成立していた。
- c) これらのADスポンサー契約はいずれも、法的には見せかけの契約であった。または、経済的実質が契約書の外観と大きく異なる取決めであった。
iii) 2009年後半から2010年前半のクラブの財政状況
2009年にクラブの商業収入は増えたが、2009年第3〜第4四半期の当時の文書は次のことを示している。
- a) クラブは予算に見込んだ水準の商業収入を得られなかった。「契約の成立」(全般的に(脚注4)、特にADスポンサーとの契約)は予想より困難であった。
- b) クラブは、2009/10会計年度とそれ以降の年度に非常に大きな損失を出すと予想していた。
- c) 今後数か月・数年に計画した支出を賄う唯一の方法は、ADUGが引き続き非常に多額の出資を行うことだと認識していた。
クラブの財政状況は、当時、その後の数か月・数年について二つの大きな懸念を生んだ。
- a) 短期的には、2009/10シーズンのクラブの総損失が、PL加盟クラブの単一シーズン最大損失記録(2006年のチェルシーFCによる1億4,000万ポンド)を上回るのではないかという現実的な懸念があった。クラブは、この記録を破ってはならないと強く考えていた。
- b) 長期的には、
- i) 黒塗り人物または組織は、クラブが少なくとも今後5シーズンにわたり大きな損失を出し続けると見ていた。
- ii) 当時検討中で導入の可能性が高いと考えられていたUEFAのFFP規則(脚注5)(および同時期に英国内で導入され得る国内FFP規則)を、クラブがどのように遵守できるか、そもそも遵守できるのか、という懸念があった。
ADUGからの所有者資金をさらに増やしても、この懸念には対応できなかった(脚注6)。したがって、対応する唯一の方法は、クラブが商業収入を大幅に、しかも迅速に増やし、ADUGからの出資への依存を減らすことであった。
iv) 偽装出資スキーム
このような背景の下、2010年初頭、クラブは株主からの資金(ADUGによる出資)を「商業パートナーからの収入」(ADスポンサーからのスポンサー収入)に見せかける計画を立てた。これが付属書15で当委員会が「偽装出資スキーム」と呼んだものである。その内容は次のとおりである。
- a) クラブは、FMVを大きく上回る高額の表向きのスポンサー料を定めたADスポンサー契約を、ADスポンサーと締結する。
- b) しかし、
- i) ADスポンサーは表向きのスポンサー料を支払う義務を負わず、支払わない。ADスポンサーはスポンサー実負担分のみを負担し、実際に支払う。
- ii) ADUG補填分はADUGが支払う(実際に支払った)。
- c) 真に商業収入であったのはスポンサー実負担分のみであり、したがって会計上、クラブの財務諸表に収入として計上すべきはスポンサー実負担分のみであった。それにもかかわらず、クラブは、
- i) 表向きのスポンサー料の全額を商業収入として扱い、
- ii) ADUG補填分が実際にはADUGからの出資・投資であるという事実を隠した。
偽装出資スキームを用いることで、クラブは次のことが可能になった。
- a) 財務諸表と必要なFFP提出書類において、ADスポンサー契約からの商業収入(したがって収入全体)が実際よりはるかに多いという誤った印象を、第三者(規制当局や監査人を含む)に与えること
- b) ADUGが実際にクラブへ投入していた出資の真の規模を、第三者から隠すこと(脚注7)
付属書15に詳しく記載するとおり、
- a) 黒塗り
- b) 黒塗り
黒塗りが偽装出資スキームを知っていた、またはその運用を承認していたという直接的な証拠はなかった。したがって、偽装出資スキームは黒塗りの知らないところで運用されていたと結論した。
クラブは、主に (a) 偽装出資スキームを第三者から隠し続けるため、(b) 規制当局やクラブの監査人などの第三者から、ADスポンサー契約について厄介な質問を受ける可能性を減らすため、運用を時折「微調整」した。それでも、本手続で審査された各シーズンを通じ、上記および付属書15に詳述した方法で偽装出資スキームを運用し続けた。黒塗りを除く各ADスポンサー契約は、偽装出資スキームの一環として締結された。
偽装出資スキームにより、クラブは2009/10シーズンから2017/18シーズンまでの財務諸表で、ADスポンサーからの営業収入として合計9億4,994万ポンドを計上できた。そのうち、
- a) ADスポンサーが負担し実際に支払ったスポンサー実負担分は1億1,925万ポンドにすぎなかった。これが、各会計年度のクラブの財務諸表に商業収入として計上されるべき金額である(付属書24参照)。
- b) 合計8億3,069万ポンドはADUG補填分であり、ADUGがクラブに支払う義務を負い、実際に支払ったものである。これを構成する資金(脚注8)は、クラブの年次財務諸表でADUGからの出資として計上されるべきであった(付属書24参照)。
| 年度 | 表向きのスポンサー料 総額 | スポンサー実負担分 | ADUG補填分 |
|---|---|---|---|
| 2009/10 | 27 | 4.5 | 22.5 |
| 2010/11 | 41.25 | 12.75 | 28.5 |
| 2011/12 | 86.75 | 16 | 70.75 |
| 2012/13 | 121.75 | 16 | 105.75 |
| 2013/14 | 127.5 | 16 | 111.5 |
| 2014/15 | 123.2 | 16 | 107.2 |
| 2015/16 | 136.17 | 16 | 120.17 |
| 2016/17 | 140.59 | 11 | 129.59 |
| 2017/18 | 145.73 | 11 | 134.73 |
| 合計(訳者算出) | 949.94 | 119.25 | 830.69 |
v) アブダビの政治とガバナンスに関するPLの主張
クラブがADスポンサーとともに偽装出資スキームを導入でき、実際に導入したという主張を補強するため、PLはアブダビについて次のことを立証しようとした。
- a) 二層構造の統治システムが存在すること
- b) 黒塗り
当委員会は、アブダビの政治とガバナンスについて、複数の個人から事実証拠と専門家証拠を聴取した。その評価は付属書6と付属書10に示す。
最終的に、PLの主張のこの部分について認定を行う必要はないと結論した。重要なのは、クラブが「どのように」「なぜ」ADスポンサーを偽装出資スキームに参加させられたかではなく、クラブが実際にADスポンサーを参加させたことをPLが当委員会に納得させられるか否かだからである。各付属書で示した理由により、当委員会は納得した。黒塗り
vi) クラブの「CPC説明」
クラブは、PLが主張するような偽装出資スキームの存在を否定した。クラブの主張は、ADスポンサー契約がADスポンサーによってどのように資金手当てされていたかをPLが誤解している、というものであった。クラブの主張する実情は次のとおりである。
- a) ADスポンサーは常に表向きのスポンサー料の全額について責任を負っており、その全額を実際に自らの資金・資源からクラブに支払っていた。表向きのスポンサー料のいかなる部分も、ADUGによって、またはADUGの資金を用いて支払われたことはない。
- b) ADスポンサーは時折、表向きのスポンサー料の支払責任の一部について、アブダビ政府に財政援助を申請していた。申請は認められ、財政援助はCPCを通じてアブダビ政府からADスポンサーに提供された。各事案でアブダビ政府がスポンサーに提供した財政援助の額が、PLがADUG補填分だと誤って主張した金額である。
- c) 黒塗り
当委員会はこの説明(本手続で「CPC説明」と定義)を真実ではないとして退けた。これはクラブが事後かなり経ってから作り上げた「説明」であり、偽装出資スキームの実態を隠蔽し、覆い隠そうとする試みであったと結論した。この結論の理由は主に付属書15に示しており、付属書12、13、14、22、33(脚注9)に記載した事項も参照される。
さらに当委員会は、黒塗りは、ADスポンサーによる正式な申請手続の結果として黒塗りが各機会に示した、表向きのスポンサー料への財政援助を提供するという本物の確約の記録を反映していない、と結論した。主に付属書15に示した理由により、黒塗りは黒塗りによって、またはその指示により作成された文書であると結論した。その目的は次のとおりであった。
- a) 締結されたADスポンサー契約の実際の条項にかかわらず、自らの負担・義務がスポンサー実負担分を超えないことを、ADスポンサーに安心させるため
- b) 必要が生じた場合に、偽装出資スキームの存在とADスポンサー契約の実態を、規制当局や監査人などの第三者から隠すため
vii) 偽装出資スキームの運用による実務上の結果
2009/10会計年度の最末期に偽装出資スキームを用いることで(脚注10)、クラブはPL史上最大の単一シーズン損失記録を破らずに済んだ。これが可能になったのは、主に、ADUG補填分というADUGからの出資を、ADスポンサーからの商業収入に見せかけたためである。そうしなければ、クラブはこの不名誉な記録を持つことになっていたであろう。
訳注PL史上最大の赤字記録(第65・79段落)
当時のPL記録は、2006年のチェルシーによる単一シーズンの損失1億4,000万ポンドでした。クラブは2009/10シーズンにこれを上回ることを強く避けたかったとされます(第65段落)。当委員会は、偽装出資スキームをこのシーズンの最末期に使ったことで記録更新を免れた、と認定しています(第79段落)。
クラブは時間の経過とともに、次の内容の多くのADスポンサー契約を交渉することも可能になった。
- a) 表向きのスポンサー料が、その契約に基づきクラブがADスポンサーに与える権利のFMVをはるかに上回るもの(付属書25参照)
- b) ADスポンサーは該当するスポンサー実負担分についてのみ支払義務を負い(実際に支払った)、該当するADUG補填分はADUGがクラブに支払う(実際に支払っていた)もの
付属書20と24に記載した理由により、これらのADスポンサー契約は見せかけの契約であり、またはクラブがADスポンサーと実際に結んでいた取決めの経済的実質を反映していなかった。しかしクラブは、ADスポンサー契約の真の性質を隠し、本物の商業関係であるかのように装ったため、表向きのスポンサー料の全額を商業収入として計上したと称した。具体的には次のとおり。
- a) 2009/10から2017/18までの各シーズンの財務諸表において。これらの財務諸表は、
- i) 各シーズン、年次決算書提出要件に従ってPLに提出された(付属書8参照)。
- ii) 2015/16、2016/17、2017/18の各シーズンにおける、クラブのPSR遵守の評価に用いられた。
- b) 2013/14から2017/18までの各シーズンの、CLFFPRsに基づくUEFAへの年次提出において。偽装出資スキームにより、クラブは (1) 当初はCLFFPRs遵守に向けて順調に進んでいるように見せ、(2) その後はUEFAに対しCLFFPRsを遵守していると主張することができた(脚注11)。
その帰結は、本手続の目的のため、次のとおり検討する。
- a) 本書で要約して記載する。
- b) 付属書23、24、29、30でより詳しく記載する。
viii) プロジェクト・ロングボウ
2012年第3四半期、クラブは「プロジェクト・ロングボウ」と称する取組みを始めた。付属書15に記載するとおり、当委員会は当時の文書と整合するクラブの説明を受け入れる。プロジェクト・ロングボウは多方面にわたるプロジェクトであり、クラブが収入を増やし営業損失を減らす方法を探ることを目的としていた。その推進要因には次のものがあった。
- a) 導入されたばかりのCLFFPRsにおけるUEFAの収支均衡要件を満たす必要
- b) 将来PL規則に導入されると考えられていた国内のFFP要件を満たせるよう、クラブを備えさせる必要
プロジェクト・ロングボウの施策の多くは、その目的を達成するための本物かつ正当な試みであった。そうでなかったものが一つある。それがフォードハム取決めである。
フォードハム取決めは付属書19に詳しく記載している。本質的には、クラブが第三者(Fordham)と結んだ、内輪で資金を回すだけの取決めであり、Fordhamは実質的にADUGの隠れ蓑(フロント)にすぎなかった。要点は次のとおりである。
- a) ADUGの資金を用いて、Fordhamが(実際にそうしたように)クラブから、クラブ所属選手の肖像権から経済的利益を得る権利を(大幅に人為的に吊り上げた価格で)取得できるようにする。
- b) ADUGの資金を用いて、Fordhamがクラブの債務(肖像権をクラブにライセンスした選手に対するクラブの支払義務)を引き受け、履行できるようにする。
したがってフォードハム取決めは、次の手段であった。
- a) ADUGの資金を、その真の出所を隠す方法でクラブに支払うためのさらなる手段。これによりクラブは、その資金を財務諸表とFFP提出書類で営業収入であるかのように装うことができた。
- b) 実際にはクラブの債務であったものをADUGの資金で履行する手段。これによりクラブは、財務諸表とFFP提出書類から営業費用を除外することができた。
フォードハム取決めの実態は黒塗りに知られていた。フォードハム取決めは、少なくとも付属書19に記載した個人の知識と承認の下で運用された。その個人には黒塗りが含まれていた。
ix) 偽装出資スキームの実例:2013年5月に生じた予期せぬ資金不足の穴埋め
黒塗り。これにより、クラブに約2,000万ポンドの即時の負債が生じ、その結果、2012/13会計年度のクラブの財務に予算外の「穴」が生じた。
2013年5月25日(2012/13会計年度末の1週間足らず前)、黒塗り、その負債によって、クラブは当該シーズンのUEFA FFP遵守に990万ポンド「不足」することになる、と黒塗り、その不足を黒塗り、すなわち偽装出資スキームの利用によって埋めることを黒塗り。数日のうちに、ADスポンサーに接触することさえなく、修正版のADスポンサー契約が複数作成された。それらは、特定のADスポンサーが、表向きのスポンサー料そのものの増額、既に起きた出来事へのボーナスの支払い、米国ツアー費用の支払いについて「合意」したかのように装うものであった。これにより、懸念されたUEFA FFP上の不足は「埋められた」。
黒塗り
x) クラブが営業損失を隠すために用いたその他の手段
偽装出資スキームにより、クラブはADUGの出資を商業収入として表示し、財務諸表上の収入を実際より多く計上できた。これと並行して、クラブは特定の負債の真の規模を偽り、財務諸表上の営業費用を実際より小さく計上する手段も用いた。いずれの場合も、実際にはクラブの負債でありクラブが負担すべきものを、ADUGが負担した。
これらの手段のうち最初に用いられたのは黒塗りである。これは付属書16で詳しく検討している。本質的には、黒塗りがクラブに提供する契約をしたサービスの対価として、クラブが黒塗りに支払うべきであったと当委員会が認定した報酬の重要な部分が、黒塗り
- a) 黒塗りの雇用契約(その他の箇所を含め)に、クラブの負債・支払義務として記載されず、
- b) 黒塗りと黒塗りとの間のコンサルタント契約に記載されていた。
これにより黒塗りは、黒塗りに関するクラブの負債の真の規模を隠した。
黒塗り取決めの資金(合計886.6万ポンド)は、ADUGの資金であった。
時系列で次に起きたのは黒塗り取決めである。これは付属書17で詳しく論じている。本質的には、黒塗り取決めにより、ADUGが黒塗り人物に多額の金額を支払うことになった。その金額は、
- a) クラブと黒塗り人物との契約書やクラブの会計記録には記載されていなかったが、
- b) クラブが黒塗り人物に負っていた負債を反映していた。
したがって黒塗り取決めは、黒塗り人物の報酬に関するクラブの負債の真の規模を隠した。
黒塗り取決めの資金(合計740万ポンド)は、ADUGの資金であった。
最後に黒塗り取決めがあった。これは付属書18で詳しく論じている。本質的には、黒塗り取決めにより、ADUGが、クラブの黒塗り人物に対する負債について、黒塗り人物または会社に多額の金銭を支払うことになった。その負債は、
- a) クラブの負債・支払義務として記載されず、
- b) 代わりに黒塗り人物または会社と黒塗り人物または会社との間のコンサルタント契約に記載されていた。
したがって黒塗り取決めは、黒塗りに関するクラブの負債の真の規模を隠した。
黒塗り取決めの資金(合計50万ポンド)は、ADUGの資金であった。
黒塗り取決め、黒塗り取決め、黒塗り取決めそれぞれの実態は、クラブに知られていた。これらの取決めは、少なくとも付属書16、17、18に記載した個人の知識と承認の下で運用された。
付属書20と24に記載した理由により、これらの取決めはいずれも見せかけの契約であり、または実際に存在した取決めの経済的実質を反映していなかった。
本手続の目的にとってのその帰結は、次のとおり検討している。
- a) 本書で要約して記載する。
- b) 付属書24、29、30で詳しく記載する。
xi) 以上から生じる帰結
2009/10シーズンから2017/18シーズンまでのクラブの財務諸表は、クラブの財政状態を真実かつ公正に表示していなかった(付属書23)。理由は次のとおりである。
- a) 各年度の財務諸表は、
- i) 収入としてではなくADUGからの出資として扱い計上すべき金額を、誤って収入として計上した(付属書24参照)。その結果、これらの年度のクラブの収入は8億3,000万ポンド超、大幅に過大計上された。
- ii) ADスポンサー契約を関連当事者取引として開示すべきであったのに、開示しなかった(付属書26参照)。
- b) 黒塗り年度において、財務諸表は、ADUGが黒塗り取決めに基づいて支払った金額をクラブの費用から誤って除外した(付属書24参照)。その結果、これらの年度のクラブの費用は合計886.6万ポンド超、過小計上された。
- c) 黒塗り年度において、財務諸表は、ADUGが黒塗り取決めに基づいて支払った金額をクラブの費用から誤って除外した(付属書24参照)。その結果、これらの年度のクラブの費用はさらに740万ポンド過小計上された。
- d) 黒塗り年度において、財務諸表は、ADUGが黒塗り取決めに基づいて支払った金額をクラブの費用から誤って除外した(付属書24参照)。その結果、当該年度のクラブの費用はさらに50万ポンド過小計上された。
- e) フォードハム取決めについて、
- i) 黒塗り年度において、財務諸表は、収入としてではなくADUGからの出資として扱い計上すべき2,450万ポンド(脚注12)を、誤って営業収入として計上した(付属書24参照)。その結果、当該年度のクラブの収入は2,450万ポンド過大計上された。
- ii) 黒塗り年度において、財務諸表は、合計4,941.4万ポンドをクラブの営業費用から誤って除外した(付属書24参照)。その結果、これらの年度のクラブの営業費用はその額だけ過小計上された。
(F) クラブに対する調査
2013/14シーズンの終盤、UEFAは次のことを行った。
- a) クラブのいくつかのADスポンサー契約について質問した。
- b) 過去のシーズンにクラブがCLFFPRsの収支均衡要件を実際に遵守していたかを調査した。
しかし、その点について結論は出なかった。UEFAとクラブは2014年5月にUEFA和解合意を結んだ(付属書14)。
訳注2014年のUEFA和解合意とは
2014年、UEFAの調査部門は、2012年・2013年を終期とする期間について「FFPを守っている」というクラブの主張に同意しませんでした。ただ、守っていたかどうかは決着せず、代わりに和解が結ばれました(脚注11)。報道によれば、主な条件は次のとおりです。
- 罰金6,000万ユーロ(うち4,000万ユーロは条件を守れば免除)
- チャンピオンズリーグの登録選手を21人に制限
- 2014/15・2015/16シーズンの移籍市場での支出と、人件費の抑制
本決定は、この和解の時点でも偽装出資スキームは続いており、UEFAも監査人もその実態に気づいていなかったと認定しています(脚注7・11)。
出典:ITV News: Manchester City fined £49m for breaking Uefa spending rules (2014) / France 24: PSG, Man City fined €60mn over financial breaches (2014)
2018年11月、2017年のクラブのサーバーへのハッキングを受けて、独誌デア・シュピーゲルが、表向きのスポンサー料の真の出所(その他の事項を含む)に関する一連の記事を発表した(付属書11)。
これらの記事を契機として、次のことが行われた。
- a) UEFAによる調査。この調査はCAS手続につながり、CAS手続はCAS裁定につながった。CAS裁定の内容と、そこから生じる特定の事項は付属書12に記載している。
- b) PLによる、クラブの財務上の取決めに関する調査(付属書13)
訳注流出報道からこの決定までの流れ
- 2017年 クラブのサーバーがハッキングされる(第103段落)
- 2018年11月 デア・シュピーゲルが流出文書(Football Leaks)に基づいて報道
- 2020年2月 UEFAが欧州大会2シーズン出場禁止と罰金3,000万ユーロを決定
- 2020年7月 CASが出場禁止を取り消し、罰金を1,000万ユーロに減額。多くの疑いは時効(5年)により審理対象外とされた
- 2023年2月 PLが告発(第1段落)
- 2024年9〜12月 審問(42日間)
- 2026年9月 本決定の公表
CASでは時効が壁になりましたが、PLの手続では2009/10シーズンまで遡って判断されています。
出典:Irish Times: Manchester City's European ban lifted and fine reduced to €10m (2020) / CNN: Manchester City's Champions League ban overturned (2020)
PLの調査と、クラブがそれにどう対応したかに関する詳細な事実認定は、付属書33と付属書34に記載している。
(G) 各告発と、それに関する主要な事実認定・判断
各告発と、それに対するクラブの答弁が、本手続の範囲を画定した。各当事者の主張は主張書面に示されており、ここで広く言及はしない。付属書1(告発1、2、3)と付属書2(告発4)に、各告発の主要な事実上・実体上の争点についての各当事者の主張の要約を示している。
クラブは、事実の基礎を否認したほか、次のことを行った。
- a) 次の点についてPLの権限に異議を唱えた。
- i) クラブに対して告発全体を行うこと。仮にそれが認められないとしても(第二の主張として)、
- ii) クラブに対して告発2を行うこと
- b) 違反を否定するための他のいくつかの主張を提起した。
- i) 告発全体に対するもの
- ii) 個別の告発に対するもの
これらの異議と主張は付属書3、27、28、31で詳しく検討している。当委員会の結論は次のとおりである。
- a) 告発を行うPLの権限に対するクラブの異議は認められなかった。
- b) クラブが提起した事項はいずれも、どの告発についても違反を否定する理由にならなかった(脚注13)。
個別の告発に移る前に、もう一つ包括的な所見を述べる。告発1(A)、1(B)、1(C)を支える事実はそれぞれ別個のものであるが、いずれも、次のような行為(当委員会の認定では意図的な行為)を伴う点で共通している。
- a) 特定の収入と負債・費用の真の性質を偽り、クラブのADUGへの財務上の依存を最小限に抑えているように見せる行為
- b) クラブの財務諸表で、クラブの財政状態が実際より良好であるという誤った印象を与える行為
このような状況では各告発を完全に切り分けるのは非現実的であり、当委員会も決定にあたってそうしなかった。ある告発についてクラブの不正行為が立証されたことは、必然的に、他の告発で主張された不正行為を、意図的な行為の継続として、より注意深く検討させることになった。
i) 告発1(A)
黒塗り対象契約の特定各ADスポンサー契約は見せかけの契約であった(付属書20)。
仮にこの結論が誤りであるとしても、各ADスポンサー契約の経済的実質はその法的形式と異なっていた。すなわち、表向きのスポンサー料のうちADUG補填分は、ADUGが払い込んだ出資であり、ADスポンサーが支払った商業収入ではなかった(付属書15、24)。
いずれにせよ、告発1(A)が対象とする各シーズンのクラブの財務諸表は、
- a) クラブの収入を非常に大幅に過大計上しており、
- b) クラブの財政状態を真実かつ公正に表示していなかった(付属書23、24)。
各シーズンにPLに提出した年次決算書がクラブの財政状態を真実かつ公正に表示していなかったことにより、
- a) クラブは年次決算書提出要件に違反し、
- b) したがって、告発1(A)が対象とする9シーズンのそれぞれにおいて、PL規則C.71/規則E3に違反した。
クラブは、各シーズンにPLに提出していた年次決算書がクラブの財政状態を真実かつ公正に表示していないことを知っていた。あるいは、真実かつ公正に表示しているかどうかを意に介さなかった(付属書15、23)。その結果、クラブは、告発1(A)で主張されたとおり最大限の誠実義務に反して行動し、この点でもPL規則に違反した。クラブはその行為により、明らかにPL規則をかいくぐる意図を有していた。
クラブが提起した事項はいずれも、告発1(A)について違反を否定する理由にならない(付属書31)。
ii) 告発1(B):黒塗り取決め名
黒塗り取決めの基礎となる合意は見せかけの契約であった(付属書20)。
仮にこの点で誤りであるとしても、当該合意と黒塗り取決め全体の経済的実質はその法的形式と異なっていた。すなわち、そこに記載された債務はクラブの債務であり、(1) クラブが支払義務を負い、(2) ADUGがクラブに代わって支払ったものであった(付属書16、24)。
いずれにせよ、告発1(B)のこの項目が対象とする4シーズンそれぞれのクラブの財務諸表は、
- a) 黒塗り取決めに基づき支払われるべき金額をクラブの費用として計上すべきであった(が、計上していなかった)。
- b) クラブの財政状態を真実かつ公正に表示していなかった(付属書23、24)。
各シーズンにPLに提出した年次決算書がこの点でクラブの財政状態を真実かつ公正に表示していなかったことにより、
- a) クラブはさらに年次決算書提出要件に違反し、
- b) したがって、告発1(B)のこの項目が対象とする4シーズンのそれぞれにおいて、さらにPL規則C.71/規則E3に違反した。
さらに、クラブは当該シーズンにおいてPL規則Q.7・8/P.7・8に違反した。付属書16に示すとおり、
- a) 黒塗り取決めの条件は、クラブと黒塗り人物との契約に記載されるべきであったが、
- b) 黒塗り取決めへの言及がなく、記載されていなかったためである。
クラブは、黒塗り取決めのため、各シーズンにPLに提出していた年次決算書がクラブの財政状態を真実かつ公正に表示していないことを知っていた。あるいは、真実かつ公正に表示しているかどうかを意に介さなかった(付属書16、23)。その結果、クラブは、告発1(B)のこの項目で主張されたとおり最大限の誠実義務に反して行動し、この点でPL規則に違反した。クラブはその行為により、明らかにPL規則をかいくぐる意図を有していた。
クラブが提起した事項はいずれも、告発1(B)のこの項目について違反を否定する理由にならない(付属書31)。
iii) 告発1(B):黒塗り取決め名
黒塗り取決めの基礎となる合意は見せかけの契約であった(付属書20)。
仮にこの点で誤りであるとしても、当該合意と黒塗り取決め全体の経済的実質はその法的形式と異なっていた。すなわち、そこに記載された債務はクラブの債務であり、(1) クラブが支払義務を負い、(2) ADUGがクラブに代わって支払ったものであった(付属書17、24)。
いずれにせよ、告発1(B)のこの項目が対象とする6シーズンそれぞれのクラブの財務諸表は、
- a) 黒塗り取決めに基づき支払われるべき金額をクラブの費用として計上すべきであった(が、計上していなかった)。
- b) クラブの財政状態を真実かつ公正に表示していなかった(付属書23、24)。
各シーズンにPLに提出した年次決算書がこの点でクラブの財政状態を真実かつ公正に表示していなかったことにより、
- a) クラブはさらに年次決算書提出要件に違反し、
- b) したがって、告発1(B)のこの項目が対象とする6シーズンのそれぞれにおいて、さらにPL規則C.71/規則E3に違反した。
さらに、クラブは当該シーズンにおいてPL規則K.12・20/T.12/13・19/20に違反した。付属書17に示すとおり、
- a) 黒塗り人物の報酬と肖像権料の支払条件はクラブとの同人の契約に記載されるべきであったが、
- b) 記載されていなかったためである。当該契約は黒塗り取決めに一切言及していなかった。
クラブは、黒塗り取決めのため、各シーズンにPLに提出していた年次決算書がクラブの財政状態を真実かつ公正に表示していないことを知っていた。あるいは、真実かつ公正に表示しているかどうかを意に介さなかった(付属書17、23)。その結果、クラブは、告発1(B)のこの項目で主張されたとおり最大限の誠実義務に反して行動し、この点でPL規則に違反した。クラブはその行為により、明らかにPL規則をかいくぐる意図を有していた。
クラブが提起した事項はいずれも、告発1(B)のこの項目について違反を否定する理由にならない(付属書31)。
iv) 告発1(B):黒塗り取決め名
黒塗り取決めの基礎となる合意は見せかけの契約であった(付属書20)。
仮にこの点で誤りであるとしても、当該合意と黒塗り取決め全体の経済的実質はその法的形式と異なっていた。すなわち、そこに記載された債務はクラブの債務であり、(1) クラブが支払義務を負い、(2) ADUGがクラブに代わって支払ったものであった(付属書18、24)。
いずれにせよ、告発1(B)のこの項目が対象とするシーズンのクラブの財務諸表は、
- a) 黒塗り取決めに基づき支払われるべき金額をクラブの費用として計上すべきであった(が、計上していなかった)。
- b) クラブの財政状態を真実かつ公正に表示していなかった(付属書23、24)。
当該シーズンにPLに提出した年次決算書がこの点でクラブの財政状態を真実かつ公正に表示していなかったことにより、
- a) クラブはさらに年次決算書提出要件に違反し、
- b) したがって、告発1(B)のこの項目が対象とする当該シーズンにおいて、さらにPL規則C.71/規則E3に違反した。
クラブは、黒塗り取決めのため、当該シーズンにPLに提出していた年次決算書がクラブの財政状態を真実かつ公正に表示していないことを知っていた。あるいは、当該年次決算書が真実かつ公正に表示しているかどうかを意に介さなかった(付属書18、23)。その結果、クラブは、告発1(B)のこの項目で主張されたとおり最大限の誠実義務に反して行動し、この点でPL規則に違反した。クラブはその行為により、明らかにPL規則をかいくぐる意図を有していた。
クラブが提起した事項はいずれも、告発1(B)のこの項目について違反を否定する理由にならない(付属書31)。
v) 告発1(C):フォードハム
フォードハム取決めの基礎となる契約は見せかけの契約であった(付属書20)。
仮にこの点で誤りであるとしても、当該契約とフォードハム取決め全体の経済的実質はその法的形式と異なっており、次のとおりであった。
- a) 肖像権取得の対価としてクラブに支払われた金額は、ADUGによるクラブへの資金注入であった。これは営業収入ではなく、出資として機能した。
- b) 肖像権料の支払義務はクラブの負債であり、(1) クラブが支払責任を負い、(2) ADUGがクラブに代わって支払った(付属書19、24)。
いずれにせよ、告発1(C)が対象とする各シーズンのクラブの財務諸表は、
- a) フォードハム取決めに基づき受け取った金額を、クラブの営業収入ではなく、ADUGからクラブへの出資として計上すべきであった(が、計上していなかった)。
- b) ADUGが支払った肖像権料を、クラブの営業費用として計上すべきであった(が、計上していなかった)。
- c) クラブの財政状態を真実かつ公正に表示していなかった(付属書23、24)。
該当シーズンにPLに提出した年次決算書がこの点でクラブの財政状態を真実かつ公正に表示していなかったことにより、
- a) クラブはさらに年次決算書提出要件に違反し、
- b) 告発1(C)が対象とするシーズンにおいて、さらにPL規則C.71/規則E3に違反した。
クラブは、フォードハム取決めのため、提出していた年次決算書がクラブの財政状態を真実かつ公正に表示していないことを知っていた。あるいは、真実かつ公正に表示しているかどうかを意に介さなかった(付属書19、23)。その結果、クラブは、告発1(C)で主張されたとおり最大限の誠実義務に反して行動し、この点でPL規則に違反した。クラブはその行為により、明らかにPL規則をかいくぐる意図を有していた。
クラブが提起した事項はいずれも、告発1(C)について違反を否定する理由にならない(付属書31)。
vi) 告発1(D)
ADスポンサー契約は関連当事者取引であった(付属書26)。
その結果、告発1(D)が対象とする9シーズンそれぞれのクラブの財務諸表は、
- a) ADスポンサー契約を関連当事者との取引として開示すべきであり、
- b) ADスポンサー契約を関連当事者取引たらしめている関係について、財務諸表の利用者がその取引の財務諸表への影響を理解できるだけの情報を提供すべきであった(付属書26)。
クラブの財務諸表は、そのような開示(または十分な開示)を一切行っていなかった。
開示の欠如それ自体は、クラブの財務諸表が財政状態を真実かつ公正に表示していないことを意味しなかった。しかし、財務諸表が適用される法令・規制上の原則に従って作成・監査されていなかったことを意味した(付属書8)。その結果、
- a) クラブはさらに年次決算書提出要件に違反し、
- b) 告発1(D)が対象とするシーズンにおいて、さらにPL規則C.71/規則E3に違反した。
クラブは、必要な開示の欠如により、PLに提出していた年次決算書が年次決算書提出要件を満たしていないことを知っていた。あるいは、満たしているかどうかを意に介さなかった(付属書26、22)。その結果、クラブは、告発1(D)で主張されたとおり最大限の誠実義務に反して行動し、この点でPL規則に違反した。クラブはその行為により、明らかにPL規則をかいくぐる意図を有していた。
クラブが提起した事項はいずれも、告発1(D)について違反を否定する理由にならない(付属書31)。
vii) 告発2
告発2に関する詳細な所見は付属書29にある。
告発1(A)、告発1(B)の各項目、告発1(C)についての所見に照らし、
- a) 告発2が対象とする各シーズンにおいて、CLFFPRsの収支均衡要件(2014年のUEFA和解合意により変更されたもの:付属書14)の遵守を評価するため、クラブの年次決算書は次のように修正されるべきである。
- i) 過大計上された商業収入・営業収入を除去する。
- ii) 過小計上された負債・営業費用を加算する(付属書9、24)。
- b) そのように修正すると、クラブは告発2が対象とするいずれのシーズンにおいても、CLFFPRsの収支均衡要件(2014年UEFA和解合意による変更後)を(非常に大きな差で)満たしていなかった(付属書29)。
- c) CLFFPRsの不遵守は、告発2が対象とする各シーズンにおいて、PL規則B.14.6の違反であった。
仮に当委員会が告発1(A)について誤っているとしても、告発1(D)についての所見に照らし、
- a) CLFFPRsの収支均衡要件(2014年UEFA和解合意による変更後)の遵守を評価するため、ADスポンサー契約の価値はFMVまで引き下げられるべきである(付属書9、24、29)。
- b) 各ADスポンサー契約のFMVは、次の金額を極めて大幅に下回っていた(付属書25)。
- i) 表向きのスポンサー料
- ii) 告発2が対象とする各シーズンについて、クラブが当時CLFFPRs提出用に関連収入(したがって収支均衡結果)を算定する際に用いた金額
- c) これらの金額をFMVに置き換えてクラブの収入と収支均衡結果を再計算すると(この第二の主張において、CLFFPRs上そうすべきであるように)、クラブは告発2が対象とするいずれのシーズンにおいても、CLFFPRs(2014年UEFA和解合意による変更後)の収支均衡要件を満たしていなかった(付属書29)。
クラブが提起した事項はいずれも、告発2について違反を否定する理由にならない(付属書27、28、31)。
viii) 告発3
告発3に関する所見のより詳しい記録は付属書30にある。
告発1(A)、告発1(B)の各項目、告発1(C)についての所見に照らし、
- a) 告発3が対象とする各シーズンにおいてクラブがPSR要件を遵守しているかを評価するため、クラブの年次決算書は次のように修正されるべきである(付属書8、24)。
- i) 過大計上された商業収入・営業収入を除去する。
- ii) 過小計上された負債・営業費用を加算する。
- b) そのように修正すると、クラブは告発3が対象とするいずれのシーズンにおいても、PSR要件を(非常に大きな差で)満たしていなかった(付属書30)。
- c) PSRの不遵守は、告発3が対象とする各シーズンにおいて、該当するPL規則の違反であった。
仮に当委員会が告発1(A)について誤っているとしても、告発1(D)についての所見に照らし、
- a) 告発3が対象とする各シーズンにおいてクラブがPSRを遵守しているかを評価するため、ADスポンサー契約の価値はFMVまで引き下げられるべきである(付属書8、24、30)。
- b) 各ADスポンサー契約のFMVは、次の金額を極めて大幅に下回っていた(付属書25)。
- i) 表向きのスポンサー料
- ii) 告発3が対象とする各シーズンに、ADスポンサー契約からの商業収入としてクラブの年次決算書に記載された数値
- c) これらの金額をFMVに置き換えると(この第二の主張において、PSR上そうすべきであるように)、クラブは告発3が対象とするいずれのシーズンにおいても、PSR要件を満たしていなかった(付属書30)。
クラブが提起した事項はいずれも、告発3について違反を否定する理由にならない(付属書31)。
ix) 告発4
訳注告発4は「調査への非協力」
告発1〜3が財務の中身を問うのに対し、告発4は、PLの調査にクラブが協力しなかったこと自体を問うものです。報道によれば、115件のうち35件がこれにあたります。当委員会は、4(B)を除いて違反を認めました。
出典:NBC News: Man City guilty of almost all the 115 financial charges
付属書33での事実認定に照らした、告発4に関する結論の詳細な記録は付属書34にある。
クラブは、PLの調査を妨げ、挫折させるために組織的な努力を行った。クラブは、PLに対して負っていた協力義務に、次の点で違反した。
- a) 告発4(A)に列挙された事項の大部分(付属書34)
- b) 告発4(C)に列挙された各事項(付属書34)
- c) 告発4(D)に列挙された事項(付属書34)
当委員会は、告発4(B)で主張された事項については、クラブはPLに対する協力義務に違反しなかったと認める(付属書34)。
PLは、告発状のうち告発4を掲げる節の末尾で、次のように述べていた。すなわち、当委員会が告発1、2または3について実際に下したのと同様の所見を下した場合には、クラブが、PLの調査の過程で財務上の取引に関するPLの質問に回答する際に、不正確・虚偽・誤解を招く陳述を行い、「追加的で、おそらくより悪質な不協力行為」を行ったと主張する権利を留保する、と。
しかし、そのような主張は、PLが審問で提示した告発4の一部を構成していなかった。告発状も、そのような告発を加えるよう修正されなかった。したがって、当委員会はこれについてこれ以上何も述べない。